達人に学ぶ

第3回 ものまねタレント育成論

フジテレビ系列の「ものまね紅白歌合戦」にレギュラー出演しているタレントが活躍する「ものまねエンターテイメントハウスSTAR」。「矢沢永吉」「マイケル・ジャクソン」「谷村新司」「桑田佳祐」「小田和正」「森高千里」「松田聖子」といった、多数のそっくりさんが、連夜、観客を楽しませています。
夢をあきらめずに追求してきたことにより、競争の厳しい六本木の街を勝ち抜いてきた南優二社長に、「顧客満足度」「タレントのモチベーション」などビジネスの社会にヒントとなる持論アプローチ方法について語っていただきました。

 

楠田:
まず、「STAR」はいつごろ、どのようなコンセプトでできたのでしょうか。その経緯をうかがいたいのですが。

南氏写真1

南 :

ものまねのタレントを抱えた芸能プロダクションなので、以前は、テレビ出演のほか、地方のお祭りやディナーショーなど、いわゆるスポット的な仕事をしていました。しかし、景気が落ち込み始めたときに、「仕事が回ってこない、自分たちの店を持たないと」という危機感が芽生え、7年半ぐらい前に「STAR」の前進となる小さな店を六本木にオープンさせました。

初めから大きな店というリスクを背負いたくはなかったので、まずは間借りの小さな店から始め、店がお客さんで満杯になるようになったら、と考えていたところ、これがうまくいき、5年前に「STAR」をオープンさせることができました。

今の店舗を探すのには1年ぐらいかかりました。2階建てステージという構想を練っていたので、「六本木」「地下1階」「天井が4b以上ある」という条件に合う物件を探すのは大変でした。たまたま倉庫として使われていた物件が見つかり、助かりました。

客席は全部で60と決して多くはありませんが、ステージとの距離を優先的に考えて――客席のどこに座ってもベストポジションとなるように――自分で設計しました。きちんと距離を測り、チョークで線を引き、ビールケースを置いて、ステージになるところにタレントを立たせて…と、いろいろな角度からチェックしました。

今の最後列はショーを満喫できる限界の位置だと思っています。あれ以上離れると楽しむのは難しいでしょう。設計の人には「店舗の経営としては最悪。普通は、最初に客席を目いっぱい取る」と言われましたが、私は逆に「そういう発想だから多くの店は失敗する」と思ったものです。

楠田:
多くのタレントさんが月曜から土曜まで毎日3回のショーに出て、時には地方にも行く、テレビにも出る――数え切れないぐらいステージに上がっていると思いますが、そういうタレントさん自身のモチベーションを維持させていくコツはありますか? また、体調管理はどうしていますか?
南 :

地方に行く、テレビに出る、というのはその都度、現場も、お客さんも違うので、タレントはテンションを高く保てます。しかし、私たちの店では、毎日同じ時間に同じサイクルで舞台に立つので、サラリーマン化してしまうところがあります。モチベーションがすぐに下がり、動きが鈍くなったり、キレがなくなったり、笑顔が少なくなったりします。

ただ、社長の私が音響も担当していて、ショーのときにステージの向かい側のボックスで音出しをするので、タレントに「社長が目の前にいるから手は抜けない」という緊張感を持たせることができます。それでもたまに「力を抜いている」とか「声が出ていない」という、私にしか分からない空気を感じることがあります。そういうときは、ショーが終わってタレントが客席に下りてくる前に、必ず言います。

普通、社長といえば経営者ですが、私は、先ほど言ったように音響のほか、スポンサー、演出家、マネジャーも兼ねるなど、本当は何人かに分けるセクションを1人でやっているので、タレントもごまかしが利きません。

また、今も必ず1日に3回は楽屋に顔を出して雰囲気をチェックしています。たまに店に顔を出すだけの、いわゆる「社長」では、店のテンションの上がり下がりには気付くのは難しいでしょう。そういった面で言えば、「STAR」は手を抜きにくい環境であることは間違いありません。もちろん、根底には一緒に素晴らしいショーを作りたいという気持ちが流れているからこそ、そこまでできるのです。

よく、人に「南さんの店を真似してもいいですか?」と聞かれるのですが、絶対に私は真似できないと思っているので「どうぞ」と答えています。もちろん感覚を真似すれば近づくことはできると思いますが、私のように、1人でオーナー、社長、演出家、音響を受け持つというスタイルができなければ難しいでしょう。お金を出す人が社長を雇い、演出家や音響を雇う。これはトップダウンの考え方で、演出家がやりたいことをタレントに伝え、それを社長に上げ、オーナーに聞き…という速度では「STAR」のショーはできません。


体調悪いながらステージに上がっている人間はたくさんいます。タレントに限らずスタッフまで合わせると40数人いるので、全員がベストでという日は、まずありません。ほとんど毎日誰かの体調が悪いのです。もちろん私自身の具合が悪いときもあります。

ただ、私の所には主治医がいるので、熱があればマネジャーが連れて行き、すぐに治療を受けさせることができます。少しでも「ゴホッ」と聞こえれば次の日に必ず行かせています。普通の人は「風邪かな」と思っても、熱が出るまでは病院に行かないと思いますが、ここではその前に手を打つことにしています。風邪をひくと、人にうつるし迷惑がかかるので、そこには一番気を使っています。風邪をひいたタレントは楽屋には入らせないようにするなど徹底しています。


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